2011年06月09日
ポーティスヘッド(PORTISHEAD)『ダミー(DUMMY)』(1994年)
ポーティスヘッド(PORTISHEAD)の1994年1stアルバム『ダミー(DUMMY)』は、私にとって90年代最高の衝撃的アルバムであったように想う。クロディーヌ・ロンジェのような可憐なヴォーカリストも大好きなのだけれど、どういう訳か私には暗黒天使も必要らしい。多くは居られない。このヴォーカルのベス・ギボンズ(BETH GIBBONS)が最も新しく出会えた暗黒天使。アルバムの1曲目はとても重要で、その『ミステロンズ(MYSTERONS)』のイントロから既に引き込まれてゆく感じ。この物憂い暗鬱さは当時の私の心に実に相性が良かったとも想う。両親の死をまだ受け入れることのできないままvelvetを始めた頃。でも無我夢中だったと想う。そして、また再び音楽に満ち溢れた毎日が始まった。このレコードを壁や立てかけるように陳列していた。それも、「ゴシック・ロック」的な音楽たちの集まったコーナー近くに。「テクノ」というコーナーを探すお方が多かったけれど、私にとってこのアルバムは「ロック」であり「ゴシック」であった。それは「祈り」のような感覚を抱いたのかもしれない。そんなカテゴライズなどどうでも良いと想う、人それぞれの感性やイメージで異なるのだから。ただ、私にはこのどこかメランコリックであり遠い記憶が呼び戻されるような世界が心地良く安堵した。ベス・ギボンズのお声はクールなようで優しく響く。まるで、デヴィッド・リンチ映画のようなミステリアスなポーティスヘッドの音楽世界は既に孤高なものであった。
PORTISHEAD/DUMMY